保育士の配置基準4.5歳児、76年ぶりに見直しというニュースが出てました。今年度(令和6年度)に変わるってききました。詳しく教えてもらってもいいでしょうか?
これは国の「こども未来戦略」に盛り込まれていて、令和6年度から配置基準を変えるとされているんです。これにより、保育士1人あたりがみる子どもの人数が少しだけ少なくなります。
本日はこのニュースについて解説しましょうか!
園の経営者だけの問題と思っていませんか?保育士として現場で働く私達にも関わってきますよ!
そうなんですね!よろしくお願いします
実際のニュースはこちら→https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/hoiku/79169(外部リンク)
こども未来戦略ってなに?
そもそもこども未来戦略ってなんでしょうか?
政府が少子化対策やそれに対する費用(財源)の考え方を示したのが「こども未来戦略方針」です。
これに盛り込まれた政策を2023年から3年間重点的に取り組みますよという計画です。
例えば児童手当の拡充や高校無償化の対象拡大など子育て支援を充実させる施策が数多く盛り込まれています。
主に盛り込まれている具体例として下記の表のとおりとなります。
画像引用:公明党ニュース
結構こども関連の政策が充実していますね!こういう配置基準は国が決めていたんですね。
そうですね!この中に保育士の配置基準の改善が盛り込まれたということです。
さぁ続いて、本題の配置基準の見直しについてです!
保育士の配置基準ってなに?
保育士の配置基準とは、”保育士1人が何歳の子どもを何人まで保育できるか”を定めた人員配置の基準のことです。
この基準は法律で定められていて、保育施設を運営する場合に必ず満たす必要があります。
なぜそんな基準があるのでしょうか?
保育の質を維持したり、保育を円滑に行うためというのが主な理由です。 子どもの事故を未然に防いで安全を確保し、子どもが安心して保育園で過ごすために、保育士人数の基準が定められています。
保育園もボランティアではありませんので、児童の人数が多ければそれだけ運営資金は潤います。保育士の配置基準がなければ、50人の児童に1人の保育士など、保育の質を落としてしまうことを防止するためのものなんです。
ちなみに保育士の人数については子どもの成長段階に合わせて年齢別に定められています。
今回の見直しは4歳児・5歳児の配置を保育士1人=30人までから25人までに減らすという見直しです。
これがなんと76年ぶりの変更ということなんです!
以下の図が変更前と変更後の保育士1人あたりの人数です。
引用:NHK首都圏ナビ
なぜ76年間も変わらなかったの?改善する必要性は?
なぜ76年という長い年月変わらなかったのでしょうか?
保育士の配置基準は、第二次世界大戦後の戦災孤児など社会的な混乱が続いていた中、子どもたちを保護する目的から、児童養護施設や乳児院が作られ、保育園もその一つで、国としての配置基準が1948年に設けられました。
戦後の混乱の中で子ども達を守るために作られていったんですね。ちなみに配置基準はどのような計算で決められたのでしょうか?
・・・・実はわかっていないんです。作られた時から現在まではっきりした計算基準がないんですよ。
この理由として、保育の配置基準に関する研究が少なく、調査も充分になされてきていないのが現状のようです。
当時は確かに共働き家庭は少なく、保育園に通う子どもも少数派で、現在の約4分の1程度でした。一方、現在は日本の半分以上子どもたちは保育園に通っている状況です。
大幅に状況が変化しているのにもかかわらず、国の見直しがなされなかったのです。
その要因の一つは保育園利用者や業界団体は、長いあいだ、社会のマイノリティだったことが挙げられます。
今までもずっと「子どもの人数に対して保育士が少なすぎる」「十分な保育ができない」など、保育士の配置基準は見直しの意見が多かったのが現状でした。
ただ、保育を利用する家庭は少なく、マイノリティの立場として、声を政治に届ける業界団体も力がついていなかったというのも原因の一つだったようです。
昔から幼稚園の業界団体のほうが力が強いのが現状なんです
近年、社会の構造も変わり、保育業界が子ども関係のマジョリティとなってきた、また最近では通園バスでの置き去り死事件や保育所での園児虐待事件などの事件・事故がセンセーショナルなニュースとして取り立たされて、世間に広まってきたことから、国も子どもの見守りを強化したい意図で、政策に反映されていくことになりました。
うーん・・ようやくといった感じですね。ちなみに、現在の配置基準をみると、5歳児は20人以内なら保育士1人で保育できるという基準のようですが、さすがに無理がありそうですよね。経験的に、この人数に対して1人の保育士が責任を持つのは無理ですよ。
そうですね、配置基準の見直しにより、子どもに目が行き届くというメリットがありますね。
デメリットは?
でもデメリットありますよね?私もなんとなく予想ができるのですが。。保育士足ります?
お見込みのとおりです。より多くの保育士が必要になってきますね。
例えば18人の5歳児クラスがありました。担当保育士1人でした。それが配置基準の変更により1人で見られるのは15人までとなってしまったら、配置基準違反となります。
この場合、園としては担当保育士を2人にするか、保育士が確保できない場合は5歳児の定員を15人に減らす必要があります。
違反したらどうなる?
保育士足りなかったら違反!?
違反になってしまったらどうなるんですか?
配置基準は法律で定められています。ということは、法令違反となり、保育園の運営ができなくなります。
認可保育園では、年に一度、配置基準を満たしているかなど監査が行なわれます。
その際に基準を満たしていない場合、改善指導や時には閉鎖命令が出されることもあります。
いつから配置基準が変更となる?経過措置もあり!
令和6年4月から配置基準は変更となっていますが、期限未定の経過措置がついています。
経過措置とは、「急な変更なので大変でしょう。しばらくは昔のままでも大丈夫ですよ。」ということです。その経過措置の期限は未定で決めていませんよということになります。
私達保育士への影響は?
園としては保育士の確保が必要です。
一方で配置基準が下がることで園の定員が変わらなければ、保育士が増えることになります。
例えば20人クラスが配置基準が下がると保育士1人から2人に増える、その分2人で仕事を分担していくことができます。残業が減ったり、待遇改善が期待できます。
これを活かした保育園が以下の記事になります
参考記事→https://sukusuku.tokyo-np.co.jp/hoiku/83141(外部リンク)
このニュースの見解
あくまで個人の現場保育士からの見解です。
配置要件の見直しについては、保育士や保護者からしたら理想の保育の実現に近づくかと思います。
ただし、その一方では、理想に社会が追いついているのかという部分もあります。
近年増加している発達障害やその疑いのある子ども達、集団生活が苦手な子、そういった子ども達を現在の人数の中でしっかり見られるのかという点や、保育士の人材不足の中で、充分な人材を配置できるのかという点、保育士の待遇改善など、まだまだ土壌が緩い状態です。
そんな中で各園も人材集めに走るでしょう。保育士の母数は見直し前も見直し後も同じなので、何が起こるかというと、保育士の出入りが激しくなり人材が安定しなかったり、園の格差が出る可能性があります。
人材確保が出来ないところは、定員を減らして基準をクリアさせる、定員が減る園が増えれば今度は保育園に入れない待機児童が発生するという、悪い循環となってしまいます。
理想を追うあまり、その享受を受けれない家庭が出てしまっては元も子もありませんよね
でも、理想や目標がなければ前に進むことはありません!現に昔よりも保育士の給料は上がり、人材が増えてきているのも確かです。
昔の保育士の方々や関連団体の方々が、色々と改善に動いてくれたからこそ、今の保育士世代があると思っています。本当に頭が下がる思いです。
男性保育士もよく見るようになりました。
そうですね、次の保育士世代につながるように私も頑張りたいと思います!
いかがでしたでしょうか?本日は私達にも影響する保育士の配置基準の話でした。
私達がそういった社会の制度の波に飲まれても、唯一出来ることは、いかに良い園を選択してそこで働けるかです。
自分では良い園か調べきることは困難なので、そういう時はエージェントがおすすめです。人間関係、待遇などあなたが重視する条件に合わせて良い保育園を紹介してくれるので、おすすめです!