保育士の給与を施設別に公開というニュースが出てました。詳しく教えてもらってもいいでしょうか?
こども家庭庁が今進めている政策で、これは令和7年から開始する予定です。本日はこのニュースについてわかりやすく解説していきますね
こども家庭庁は2025年度から、子ども・子育て支援法に基づく、施設型給付・地域型保育給付を受けるすべての施設・事業者に対し、保育士の給与水準を都道府県へ報告するよう義務付け、施設別に公開する方針をとりました。
実際のニュースはこちら
子ども・子育て支援法に基づく、施設型給付・地域型保育給付を受けるすべての施設ってなんですか?
ここは説明が長くなってしまうので、ものすごく簡単にいうと皆さんがイメージする保育園や幼稚園だと思えばOKです。よって全国で約7万施設が対象となります。
誰が決めた?
この議論は実は令和4年度から子ども・子育て支援制度という枠組みの中の”子ども・子育て支援制度における継続的な見える化に関する有識者会議”というところで、調査研究という形で議論されてきていました。 そこで、今回の方針が決まったということで、ニュースになりました。
令和4年度こども家庭庁が発足される前なので、内閣府が当時は管轄していました。
何が目的?
そもそも、この公開するというのは何が目的なんでしょうか?
まず、この会議が作られた目的から説明していきます。これは全国の幼稚園や保育園などの施設の経営情報のデータベースを作り、継続的に見えるようにしていきましょう、それによってきちんとした検証を行って公定価格を改善したいという目的の会議です。
”継続的に”というところがポイントで、継続的に行うことで過去と今の比較ができるようになるメリットがあります
”公定価格を改善”ってなんですか?保育士の私達に影響はあるんですか?
公定価格は、簡単にいうと子ども1人にかかる教育・保育費用になります。保育園などはその基準価格を基に計算された金額を国・都道府県・自治体から財政支援としてもらうことが出来ます。その算定の中には人件費も含まれているので保育士の給与にも影響はありますよ。
なるほど!保育園などは公的な支援を受けて運営していて、その中から給与も支払われているということですね
この公定価格というのは、国が決めるのですが算定の基本となる超重要な数字になるので、今回の取り組みで各施設から様々な情報を得て、きちんとした価格を決めたいということなんです。
公開することのメリットは?
でも公開することがなぜ保育士の処遇改善につながるんでしょうか?
公開することによる私達へのメリットは大きく4つあります。
保育士(私達)のメリット
全国の施設を詳しく比較することができるようになり、転職・就職の職場選択などキャリアの検討に使えるようになります。
給与のチェック(他の施設との比較)、職員がどれくらいいる(人手は足りている)のか、自分のキャリアアップのシミュレーションに使えそうですね!
保護者のメリット
入園前の施設の比較が可能になり、自身のニーズに適した子育て支援の選択が可能になります。
施設のメリット
他の施設の経営指標などを比較・参考とすることで、 自らの施設の改善が可能になります。
関係団体のメリット
支援団体や研究者など幼児教育や保育に関する支援や施策の企画・立案・分析が進むことが期待されます。
また、行政機関も各施設の実態をチェックすることができ、国・都道府県・市などの自治体が、よい政策に反映できます。
実態を正確に知らせることで、民間の支援を得たり、行政機関の政策も充実させようということですね。また保護者も保育園チェックができるということですね。
そのとおりです!行政の政策などで「机上の空論で現場のことを何もわかってない!」が少なくなるといいんですけども・・・
何が公表されるの?
ニュースでは給与とだけ報道されていますが、正確には”事業者の状況・概要、職員配置、職員給与、経営収支 の状況”などと多岐にわたります。
引用:子ども子育て支援制度における継続的な見える化のあり方について(令和5年度子ども家庭庁調査研究事業報告書)
どうやって公表するの?
子ども・子育て支援情報公表システム「ここdeサーチ」 の機能を拡大して公開していくようです。WEB上で誰でもみることができるのですが、ちょっと課題が・・・。
この「ここdeサーチ」は3年ほど前から運用されています。全国の保育園の詳細情報(定員・職員数・時間など)をチェックできるサイトなのですが、あまりデータが提供されていなく乏しいです・・・正直googleマップ検索で保育園のHPを見たほうが早かったりするのでなんとも言えないサイトです。
義務化になれば、情報が充実していくことを期待します。あと認知度にも課題がありますね・・
懸念点
個人的な見解です
事務の煩雑化・仕事量の増加
保育園などに関わる制度は近年、複数の手当や補助金事務など入り組んだ制度となり、処遇改善手当など各種事務の手続きは煩雑化しています。公開するにあたり、様々な情報は施設側が提供しなければなりません。保育士の人手不足に事務量が加わったら、さらに仕事量が増えてしまうことが想定されます。
保育園などをこの情報だけで判断されてしまう恐れ
保育園などは給与や職員配置だけなどで良し悪しが決まるものではないです。保育園はそれぞれが色々な特色を出しながら、創意工夫をしています。また働く側としたら、職場の雰囲気や人間関係も重要なファクターとなります。この情報だけがひとり歩きし、”この保育園は給料が高いから良い保育園だ”という、一部分のみの切り取りで保育園格差が生まれないことを願います。
公定価格の地域差など、複雑な仕組みを理解されるように提供できるか
公定価格加算は地域によって割合が決まっており、その差があるため、給与に反映されるとどうしても地域によって格差が生まれる場合があります。こういった複雑な仕組みの情報なしに、結果を公開することで、ただ差があることだけが悪目立ちしてします。
また職員配置や人数も定員次第なので、配置人員の仕組みを知る必要があり、他の保育園より保育士が多いだけでは読み取り不足でしょう。
一般公開する際にその仕組みを知る人と知らない人では読み取り方が違うため、どんな人も適切な判断がされるような提供ができるかが課題かなと思っています。
いかがでしたでしょうか。保育士は、うまく情報を得て自分のスキルアップや転職に活用していきましょう! 公開されたら、また読み解き方の解説記事も作ろうと思っています。
ありがとうございます!この情報も利用してキャリアアップ目指します!
転職などのキャリアアップは1人では困難です。転職には保育士転職の専門家の力が必要です。選び方は次の記事がおすすめです!